サイテックジャーナル1999年10月7日号「2000年問題 問題発生 JR発券システム」で,JR西日本のシステムで問題生じたを書きました。この事件に関連して,JR西日本のホームページに2000年問題に対する対応について掲載されています(http://www.westjr.co.jp/kou/2000/2000nen.html)。
この掲載を見る限り,「当社に関わるシステムは、「列車運行に関わるシステム」「指定席等販売に関わるシステム」「社内システム」に分類されます。これらのシステムについては本年9月末までに一通り対応を終了しましたが」とあるように,JR西日本としては対策は完了していたと認識していたようです。また「何がどうなる?どうする?2000年危機」(日本実業出版社)に掲載されている「JR各社の2000年問題への取り組み状況」(72〜73頁)によると,JR西日本の全体の対応完了予定時期は99年9月末となっています。ここからもJR西日本では9月末に2000年問題の対応は完了する予定であったことがうかがえます。
しかし問題はおこってしまった。JR西日本の対応が悪いということを言っているのではありません。問題が生じると直ちに対応しそのことについてホームページでコメントするなど,JR西日本の素早い対応はある意味でむしろ好感が持てるものかも知れません。
ここで注目しなければならないことは,問題が発生したシステムが,2000年問題への対応が済んでいないシステムではなく,対応が完了したはずのシステムだったということです。2000年問題のすべてを把握することがいかに難しいかということです。
個人的にはすべてを把握することは不可能だと考えています。「対応は完全に完了した」とか「問題は起きない。絶対に安全だ」ということは,私には言えません。もちろんだから対応しないとか対応することが無意味だというわけではありません。問題を正しく認識してできるだけ対応する。しかし完全に対応することは不可能であるという事実を正確に認識した上で必要な危機管理を行う。サイテックシステムとしてはこれが最も良い方法であると考え,お客様に提案していきます。
最近の新聞を見ると,社長動員で大がかりなシミュレーションテストを行い「問題は起きなかった。我が社の対策は完了した」と発表した企業がいくつもあるようです。しかしシミュレーションテストはあくまでテストをする人が考え得る状態をシミュレーションするものであり,その範囲を超えたことが起きると,つまり見落としがあるとテストの結果とは異なることが起きる可能性があります。もちろん各社とも2000年問題を重要な問題としてとらえて真剣に対応しています。専門の技術者が対応にあたっているはずです。問題は起きないと信じたい。しかし今回対応が完了していたはずのシステムで問題が起きてしまった。この事件と同じようなことが絶対におこらないということが言えるでしょうか。残念ですが心配になってしまいます。
Written by 大坪 和久