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サイテックジャーナル
2000年8月20日号


秘密メールの送り方


 最近はメールを利用する人が増えてきましたね。先日,コンピュータなんて全く興味がなかった(というよりむしろ嫌っていた)古い友人から,「メールアドレスおしえて」なんてきかれて,びっくりすることがありました。

 メールを利用しているのは個人だけではありません。企業内あるいは企業間でも利用されています。中には機密情報のやりとりも行われています。

 インターネットでは,送信されたメールはいくつかのコンピュータを経由して相手に届きます。どのコンピュータを経由して届くかは送信する時点では分かりませんし,また指定することもできません。経由するコンピュータの管理者が,意図的に他人のメールを覗いてやろうと思えば,技術的には覗くことが可能です。ですから,第三者に見られたくないメールは,見られないようにする工夫が必要になってきます。

 メールを覗かれないようにするには,いくつかの方法があります。よく使われているのが,暗号化ソフトを使って送るという方法です。暗号化ソフトがインストールされているパソコンでメールを書いて送信すると,メール本文は暗号化されて相手に送信されます。受取人側では,暗号化されたメールを受信すると,暗号化ソフトがもとの文章に変換して表示してくれます。インターネット上を流れるメール本文のデータは暗号化されているので,第三者にメール本文を読まれる心配はほとんどありません。

 しかし,この方法では,メール送信者と受信者の双方が同じ暗号化ソフトを購入してインストールしておく必要があるのが一般的です。特定の企業間でメールのやりとりをする場合ならともかく,個人が利用するにはちょっと面倒です。ソフトを買わなくてはいけないのでお金もかかってしまいます。


 そこで,もう少しお手軽な別の方法を紹介します。

 マイクロソフトのワードの「読み取りパスワード」機能とメールのファイル添付を利用する方法です。ファイル添付については,サイテックジャーナル2000年5月30日号でも紹介しています。ワードの「読み取りパスワード」は,もともとワードの文書をパスワードを知っている人しか読むことができないようにするための機能です。

 「読み取りパスワード」機能を使って保存された文書を開こうとすると,下のようなメッセージが表示されます。





 ここで,正しいパスワードを入力すると,いつもと同じように文書を開くことができます。しかし,パスワードを入力しなかったり,正しくないパスワードを入力した場合は,下のようなメッセージが表示されます。





 パスワードを知っている人しか文書を開くことができないのです。この「読み取りパスワード」を設定するのは簡単です。文書を作成して保存するときにパスワードを設定します。ワード2000の場合,「名前を付けて保存」を選択したときに表示されるダイアログボックスの中の「ツール」を選択し,「全般オプション」を選びます。すると下の画面が表示されます。

 




 ここで,画面下の「読み取りパスワード」を入力します。パスワードは半角15文字以内,大文字と小文字は区別されます。パスワードを入力したら「OK」ボタンを押してください。これでOKです。パスワードをつけて保存したワード文書を,メールに添付して送りましょう。

 「読み取りパスワード」は,電話などで相手に知らせます。もちろん,メール本文にパスワードを書いて教えたりしないでくださいね。


 この方法でメールを送ると,たとえ第三者にメールを覗かれたとしても,パスワードが分からないので本文を読まれることはありません。もちろん,暗号が絶対に解読されないという保証はありません。多くの手間と時間(つまりはお金)をかければ解読されてしまう可能性がないとは言えないのです。それはどんな暗号化ソフトを使っても同じです。

 しかし,何もせずに送る場合と比べると,機密性は圧倒的に高まります。上に書いたように,もともとインターネットのメールシステムでは,送信されたメールがどのコンピュータを経由するかは分かりません。そんな中から,特定のメールをなんとかしてとりだしてさらに暗号を解読する,というのはそれほど簡単なことではありません。今回紹介した方法もそれなりに実用的だと思います。


 ある記事で読んだのですが,機密が漏れる原因の多くは,技術的に暗号を解読されたりパスワードを見つけだされることではないそうです。最も多い原因は「人間」だそうです。電話番号や誕生日をパスワードにする,パスワードを書いた紙をモニタにはる,パスワードを入力して機密文書を画面を開いた状態のままでパソコンの前から長時間離れる,印刷した機密文書をプリンタのトレイに長時間おいたままにする,こんなことから機密情報が漏れることが多いそうです。確かにこれではどんな高度な暗号化技術を使っても簡単に機密は漏れてしまいますね。

 これを読んでいるあなた,モニタの横にパスワードを書いた付箋が貼られたりしていませんか? 気をつけましょう。

Written by 大坪 和久


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