■東京都の便利なサービス
昨日(3月14日)の日経新聞夕刊に「都,働きながらの子育て支援 保育所空き情報
ネットで支援」という記事が載っていました。
この記事によると,東京都は4月から都内約1600ヶ所の保育園の空き情報を年齢別にインターネットで提供するそうです。1998年の法律改正で利用者が保育所を選べるようにはなっているのですが,今までは保育園の空き情報を得るためには,区市町村か保育所に個別に問い合わせるしかなかったそうです。保育園への入所待ちをしている「待機児」は,都内に1万2千人以上いるそうです。
このサービスが始まると便利になりますね。いくつもの保育園に直接問い合わせるのは大変です。保育園を利用しようとしている人は昼間働いている人が多いと思います。そんな人達が保育園や役所が開いている時間にいくつも問い合わせをするというのはかなり難しいのではないでしょうか。インターネットであれば,検索機能を使って多くの保育園の情報を簡単に調べることができるでしょうし,時間の制約もありません。仕事から帰って家でゆっくり調べればよいのです。
新聞によると,空き状況の情報は毎月更新される予定だそうです。何度も直接問い合わせをしなくても,新しい情報が入手できるわけです。また,このサービスと同時に,市区町村ごとに子育てに関する施設の名称,住所,電話番号の入った地図「子育て支援マップ」もホームページに掲載するそうです。ますます便利になりますね。
■便利なサービスなんだけど...
紹介した東京都のサービス以外にも,最近インターネットを利用したいろんなサービスが始まっています。便利で役に立つものもたくさん出てきています。また,特別なサービスを利用しなくても,ちょっと調べものをするだけでもその便利さを実感できます。インターネットを使っているのといないのでは,その差は絶大です。
そうです。差は絶大なのです。例えば紹介した東京都のサービス。インターネットを利用している人は,仕事から帰ってパソコンを使って空きのある保育園を検索し,その中から保育園を選んで入所の申し込みをすることができます。ではインターネットを利用していない人はどうでしょうか。今までと同じ方法で空きを探すことになります。仕事の休憩時間等を利用して,いくつもの役所や保育園に1つずつ電話をかけて空きを探していくのです。都内に保育園は約1600ヶ所あります。簡単に空きが見つからないかも知れません。その間にもインターネットで検索した人がどんどん入所を決めてしまいます。ますます空きが少なくなっていきます。
保育園だけではありません。プレステ2を買うにしても同じです。店で買うためには大変な苦労が必要ですが,インターネットを使えば,注文してただ家で待っていればいいのです。
みなさんはこの現状をどう思いますか。プレステ2はともかく,保育園のサービスについて考えるとちょっと疑問を感じてしまいます。インターネットを利用しているかいないかだけで,子供を保育園に入れることができたりできなかったりしてしまう。あまりよい状態だとは思えません。
最近アメリカで「デジタル・デバイド」という言葉が使われています。「デバイド」とは「分ける」とか「分かれる」という意味です。インターネット等を利用して情報を入手する人は入手した情報を利用してどんどん有利になり,一方,インターネット等を利用していない人は情報を入手できないのでどんどん不利になっていく。分かれていってしまう。情報に関する貧富の差とも言えます。アメリカ政府はこの現象を「デジタル・デバイド」と呼び,回避しなければならないものとして取り上げています。
日本でも同じようなことが起こってくると思います。すでに一部では起こっていると言えるのかも知れません。
これから先,ますます多くのインターネット等を利用したサービスが始まるでしょう。近い将来,そのサービスを利用すると便利になるというだけではなく,そのサービスを利用しなければ困るという状態にさえなっていくことでしょう。サービスを利用するのは一般の人々です。情報サービスが社会に浸透するためには,社会の人々が簡単に情報にアクセスできる状態であることが必要です。
インターネット等を利用した技術やサービスは急速に進んでいます。それに対し,全ての人がインターネットなどを利用できるようになるためには時間が必要です。この記事を読んでいるあなたのように,ホームページを見たりメールを利用したりしている人ばかりではありません。ホームページを1度も見たことがない人はたくさんいるのです。
良い社会にするためには,技術やサービスの開発を行うだけではなく,人々に技術やサービスの便利さを実感してもらうための行動が必要なのです。
サイテックシステムは,コンピュータやインターネットの専門家ではない普通の人々に,コンピュータやインターネット,そしてそれらを利用したサービスについて知ってもらい,うまく利用してもらうために行動していきたいと考えています。
●関連ホームページ
・東京都福祉局ホームページ(紹介したサービスは4月開始です)
http://www.fukushi.metro.tokyo.jp/
Written by 大坪 和久