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サイテックジャーナル
2000年2月13日号


知らないうちにコンピュータ・グラフィックス


 最近は,映画はもちろんテレビでもコンピュータ・グラフィックス(CG)がよく使われています。特にCM等ではとても盛んに使われていますね。CGを使うとインパクトの強い映像を作ることができるので,宣伝効果が高いのかも知れません。

 また,CGは現実にあり得ない映像を作ることができます。例えば「フォレスト・ガンプ/一期一会」という映画では,俳優トム・ハンクスとケネディ大統領が握手をする場面など,昔のニュース映像との合成画像が話題になりました。

 どちらの場合も,見ている人はこれはCGだ,合成画像だということが分かります。実際にはあり得ない映像だからです。

 しかし最近は少し様子が変わってきています。気付かないうちにCG画像を見ているかも知れないのです。


■グラウンドにある不思議なライン

 ある日の深夜,テレビでアメフトの試合を見ていました。みなさんアメフトのルールって知っていますか? すごく簡単に言うと,4回の攻撃でボールを相手陣地の方向に10ヤード進めればよいというゲームです。4回の攻撃でボールを10ヤード進めることができたら続けて攻撃することができますが,10ヤード進めることができなかったら攻守が入れ替わります(簡単すぎてすみません)。

 ここで大切なのは,ボールが10ヤード進んだかどうかが問題になるということです。攻撃が終わったときに10ヤード進んだかどうか判定されるのですが。攻撃のたびに10ヤード先に線を引くわけではないので,ボールが正確に10ヤードを超えたかどうか分かりにくい場合があります。微妙なときには,「計測」といって,10ヤードの長さのひもを用意して,攻撃前のボールの位置と攻撃後のボールの位置を正確に計ったりすることもあります。

 しかし,その日の試合では,なぜか10ヤードの位置に黄色のラインが引かれていました。攻撃が行われるたびにその黄色のラインも移動します。ロープのようなものを動かしてるのではなく,ちゃんと芝生の上に線が描かれているのです。毎回新しいラインを引いて古いラインを消すようなことはしていないし,いったいどうなっているんだろうと,試合のことはすっかり忘れて画面に目をくっつけてみていました(お子さまへ テレビを見るときには部屋を明るくして画面から離れて見ましょう)。


■選手の不思議な動き

 そうやってしばらく試合を見ていると,おかしなことに気付きました。攻撃の後,ボールは明らかに10ヤードの黄色のラインに届いていないのに,選手や審判は10ヤードに届いたかどうかを気にしているのです。ついに審判は「計測」を指示して,ロープで距離を測っています。「届いてないじゃん」とテレビに向かって言っても,一生懸命「計測」しています。どうもその黄色のラインは選手や審判には見えていないようなのです。

 しばらく試合を見ているうちにやっと分かりました。その黄色のラインは,実際には存在しないのです。合成されたものであり,テレビを見ている人だけが見ることができるラインだったのです。しかしどう見ても合成には見えません。本当に芝生の上に描いてあるように見えるのです。ラインには芝生の模様もちゃんと付いてるし。カメラアングルが変わると,それにあわせて太さも変わります。知らなければ合成だとは全く気付かないでしょう。


■仮想広告

 画像の合成はラインだけではないようです。2月13日付の日経新聞にこんな記事が載っていました。「テレビに仮想広告 日常化」,「実在しない看板・ロゴ 画面にくっきり」。アメリカでは画像の合成は頻繁に行われているようで,広告にも使われているようです(そういえば黄色のラインの番組もアメリカの放送局が作った番組でした)。

 例えばサッカーの試合で,グラウンドの横に広告の看板があるのを見たことがあると思います。アメリカでは,あの看板が実は合成画像だったりするわけです。センターサークル上に起業のロゴを表示させたりする場合もあるようです。

 このような合成画像に,視聴者はほとんど気付かないそうです。なんかいやな感じがしますね。人によってはだまされたようで気分が悪いでしょう。実際にアメリカではテレビ局宛に苦情や問い合わせがくることもあるようです。

 日本ではどうなのでしょうか。記事の中では触れられていませんでした。もしかすると,知らないうちにあなたも合成画像にだまされているかも知れません。 

Written by 大坪 和久


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